表装のこだわりッ!!
「実物を目の前に学芸員が詳しく解説」する「浮城特別鑑賞講座 湖国“モノ”語り」の第5回「文化財のかたち-表装のいろいろ」が、2月23日(土)に滋賀県立琵琶湖文化館にて開催されました。
「表装」・・・皆さん聞いたことはありますね?!日本人の「和」の心を表現しサポートしてきた非常に重要な匠の技です。一般には
・表装・表具・・・紙や布などを貼って、巻物・掛け軸・帖・屏風・ふすまなどに仕立てること。
・装潢・・・和紙の染色や紙継ぎ、裁断などを行うこと
・装丁・装幀・装釘・装訂・・・製本の仕上げに書物の表紙・扉・カバーなどの体裁を整えること
などの言葉があります。
作品の取扱や利用に便利なように、また作品を保護し美しく整えるため、これら匠の技が活かされているのです。
もともと人々は大切なことや人に伝えたいことなどを様々な形で残そうとしてきました。
文字の記録媒体として
①金石・・・金属や石に文字を刻む
②竹・・・竹簡。特に東洋において紙の発明・普及以前、書写材料として使用
③木・・・木簡。文字などを書き記した木の札
④絹・・・紀元前3000年ごろに生産が始まり、服飾用だけでなく、記録媒体としても用いられた
⑤紙・・・中国の「後漢書」の中で、105年に蔡倫が和帝に紙を献上したという記述があることから、
紙の発明者が蔡倫だとされたこともあった。
現在では、蔡倫は紙の改良者であるといわれることが多い
⑥貝多羅葉・・・椰子の葉を利用し写経などに使用した
これらはいろいろな形に加工?!されます。文化財の形あれこれです。
講座では白い紙を利用して“実習”!理解が深まります。
竹簡・木簡・・・紐で綴じられ、ばらつかず持ち運びが便利になる。
難点:かさばる・・・不便・・・
↓
巻子(かんす)・・・料紙を継いで長くし(「継紙」「続紙」)、表紙と軸をつけたもの。巻物。
(巻子の上手は右、継ぎ目は右が上に重なるように)
難点:読みたいところを見るためには、ダーッと全てを広げなければならない・・・面倒・・・
↓
折本(おりほん)・・・継紙を蛇腹折りにし表紙をつけたもの。
(お坊さんが経典の折り本を「転読」する
映像がよくテレビで放送されますね)
なるほどすぐ読みたいところが読める!
難点:裏側は真っ白。もったいない!紙は貴重!
↓
粘葉装(でっちょうそう)・・・一紙一紙を折りたたみ、
背(袋となる側)を糊付けしたもの
表裏に字が書ける!巻子・折本と比べて
画期的!
↓
綴葉装(てっちょうそう)・・・何枚かの紙を束ねて折りたたみ
さらにそれを重ねる(合本?!)
たくさん書ける!素晴らしい!
↓
袋綴(ふくろとじ)・・・表にしか字を書いてない。
文章量が少なくても本に厚みができる。
木版印刷の普及→両面印刷は難しい
=紙の普及によって余裕ができた
(ある意味ぜいたく~)
このように、本は人間の都合のいいように、さまざまに改良されてその形を変え、発展してきたのですね~。人間ってと~っても“かしこい”です!
ではでは、いよいよ実物を見て解説を聞きます。
←巻子
袋綴の本→
掛け軸では、いろいろな部位の名称(本紙・一文字・中回し・上下(天地)・露・軸先など(これでどの部分か分かる人はかなり通!!)を教えて頂きました。
「花鳥図」(中林竹洞筆)
見事なキジが描かれてますね~いやいや、今回はその周り、「表装」を見るんです!
こちらの掛け軸、本紙(絵の部分)に折れが目立ち、多数の糊浮きが見られたことから、平成17年に専門家によって修理が施されています。その時、恐るべきこだわりが!
①絵を囲っている総縁(赤い縁)がもともと薄い水色だったのを、キジのおなかの色に合わせて赤色にした。が、同じ赤にしたのでは絵が目立たない→周りはトーンを落とした落ち着いた色合いに→赤く染めた生地を更に藍で染めて渋い色にした!なんと細かい職人技!!
②一文字(絵の上下/紺地に金色の柄がある部分)には、古い紗の着物を解き、染料で紺色に染めたものに印金(金箔の型押し)を施した→金箔と図柄に素朴な趣がでて全体としてキジの悠然とした表情を引き立たせる効果が得られた!確かにシブい!!
いやぁ驚いたのはこのような注文を出せる学芸員さんの感性の鋭さと、それに応える職人さんの技!なんとも素晴らしいです!
「泉福寺焼経」
こちらを展示した時、参加していた奥様方から「あら~」「まぁ~」っと、うっとりため息が・・・
焼けてしまった経典を改めて表装し直したものです。
表具の裂の取り合わせもさることながら、小さい本紙を活かすための台による空間美が素晴らしい一品です!
表装の仕立てひとつで作品の印象が大きく変わります。普段、博物館で絵や書などの文化財を見るとき、そこに描かれている、書かれているものばかりに目をうばわれず、これらを引き立てる表装にも注目したいものですね。日本人の心の粋、先人の知恵を感じたいものです。
さて、次回の「浮城特別鑑賞講座 湖国“モノ”語り」は「幽玄の神々-神像と信仰具-」と題し3月29日(土)に開催されます。やはり実物を目の前にできるこの講座は魅力大!関連資料を目の前に、学芸員による詳しい解説が聞けますので、是非参加してみてはいかがでしょうか。詳しくは滋賀県立琵琶湖文化館TEL:077-522-8179まで。
では、ここで前回(第4回)の答え合わせを!
さて、こちらのよく似た絵、どちらも「横井金谷」の作とされていますが、実はホンモノとニセモノ・・・どちらが贋作かわかりますか?
答えは左!あなたの真贋の目はいかがだったでしょうか???
間違えた人も気を落とさずに!自分が気に入ったらそれが
ホンモノ!位の気持ちで!(私は間違えた!!!)
奥深い近世絵画の魅力、これからもホンモノを見る目を養ってくださいね。
ではでは、ここで、質問です!
今回の講座でも大活躍したこちらの道具は何をするものでしょう?!
参加された方はもうお分かりですね?!(カブトムシではありません!!)
答えは次回・第6回のブログで紹介します。
「表装」・・・皆さん聞いたことはありますね?!日本人の「和」の心を表現しサポートしてきた非常に重要な匠の技です。一般には
・表装・表具・・・紙や布などを貼って、巻物・掛け軸・帖・屏風・ふすまなどに仕立てること。
・装潢・・・和紙の染色や紙継ぎ、裁断などを行うこと
・装丁・装幀・装釘・装訂・・・製本の仕上げに書物の表紙・扉・カバーなどの体裁を整えること
などの言葉があります。
作品の取扱や利用に便利なように、また作品を保護し美しく整えるため、これら匠の技が活かされているのです。
もともと人々は大切なことや人に伝えたいことなどを様々な形で残そうとしてきました。
文字の記録媒体として
①金石・・・金属や石に文字を刻む
②竹・・・竹簡。特に東洋において紙の発明・普及以前、書写材料として使用
③木・・・木簡。文字などを書き記した木の札
④絹・・・紀元前3000年ごろに生産が始まり、服飾用だけでなく、記録媒体としても用いられた
⑤紙・・・中国の「後漢書」の中で、105年に蔡倫が和帝に紙を献上したという記述があることから、
紙の発明者が蔡倫だとされたこともあった。
現在では、蔡倫は紙の改良者であるといわれることが多い
⑥貝多羅葉・・・椰子の葉を利用し写経などに使用した
これらはいろいろな形に加工?!されます。文化財の形あれこれです。
講座では白い紙を利用して“実習”!理解が深まります。
竹簡・木簡・・・紐で綴じられ、ばらつかず持ち運びが便利になる。
難点:かさばる・・・不便・・・
↓
巻子(かんす)・・・料紙を継いで長くし(「継紙」「続紙」)、表紙と軸をつけたもの。巻物。
(巻子の上手は右、継ぎ目は右が上に重なるように)
難点:読みたいところを見るためには、ダーッと全てを広げなければならない・・・面倒・・・
↓
折本(おりほん)・・・継紙を蛇腹折りにし表紙をつけたもの。
(お坊さんが経典の折り本を「転読」する
映像がよくテレビで放送されますね)
なるほどすぐ読みたいところが読める!
難点:裏側は真っ白。もったいない!紙は貴重!
↓
粘葉装(でっちょうそう)・・・一紙一紙を折りたたみ、
背(袋となる側)を糊付けしたもの
表裏に字が書ける!巻子・折本と比べて
画期的!
↓
綴葉装(てっちょうそう)・・・何枚かの紙を束ねて折りたたみ
さらにそれを重ねる(合本?!)
たくさん書ける!素晴らしい!
↓
袋綴(ふくろとじ)・・・表にしか字を書いてない。
文章量が少なくても本に厚みができる。
木版印刷の普及→両面印刷は難しい
=紙の普及によって余裕ができた
(ある意味ぜいたく~)
このように、本は人間の都合のいいように、さまざまに改良されてその形を変え、発展してきたのですね~。人間ってと~っても“かしこい”です!
ではでは、いよいよ実物を見て解説を聞きます。
←巻子
袋綴の本→
掛け軸では、いろいろな部位の名称(本紙・一文字・中回し・上下(天地)・露・軸先など(これでどの部分か分かる人はかなり通!!)を教えて頂きました。
「花鳥図」(中林竹洞筆)
見事なキジが描かれてますね~いやいや、今回はその周り、「表装」を見るんです!
こちらの掛け軸、本紙(絵の部分)に折れが目立ち、多数の糊浮きが見られたことから、平成17年に専門家によって修理が施されています。その時、恐るべきこだわりが!
①絵を囲っている総縁(赤い縁)がもともと薄い水色だったのを、キジのおなかの色に合わせて赤色にした。が、同じ赤にしたのでは絵が目立たない→周りはトーンを落とした落ち着いた色合いに→赤く染めた生地を更に藍で染めて渋い色にした!なんと細かい職人技!!
②一文字(絵の上下/紺地に金色の柄がある部分)には、古い紗の着物を解き、染料で紺色に染めたものに印金(金箔の型押し)を施した→金箔と図柄に素朴な趣がでて全体としてキジの悠然とした表情を引き立たせる効果が得られた!確かにシブい!!
いやぁ驚いたのはこのような注文を出せる学芸員さんの感性の鋭さと、それに応える職人さんの技!なんとも素晴らしいです!
「泉福寺焼経」
こちらを展示した時、参加していた奥様方から「あら~」「まぁ~」っと、うっとりため息が・・・
焼けてしまった経典を改めて表装し直したものです。
表具の裂の取り合わせもさることながら、小さい本紙を活かすための台による空間美が素晴らしい一品です!
表装の仕立てひとつで作品の印象が大きく変わります。普段、博物館で絵や書などの文化財を見るとき、そこに描かれている、書かれているものばかりに目をうばわれず、これらを引き立てる表装にも注目したいものですね。日本人の心の粋、先人の知恵を感じたいものです。
さて、次回の「浮城特別鑑賞講座 湖国“モノ”語り」は「幽玄の神々-神像と信仰具-」と題し3月29日(土)に開催されます。やはり実物を目の前にできるこの講座は魅力大!関連資料を目の前に、学芸員による詳しい解説が聞けますので、是非参加してみてはいかがでしょうか。詳しくは滋賀県立琵琶湖文化館TEL:077-522-8179まで。
では、ここで前回(第4回)の答え合わせを!
さて、こちらのよく似た絵、どちらも「横井金谷」の作とされていますが、実はホンモノとニセモノ・・・どちらが贋作かわかりますか?
答えは左!あなたの真贋の目はいかがだったでしょうか???
間違えた人も気を落とさずに!自分が気に入ったらそれが
ホンモノ!位の気持ちで!(私は間違えた!!!)
奥深い近世絵画の魅力、これからもホンモノを見る目を養ってくださいね。
ではでは、ここで、質問です!
今回の講座でも大活躍したこちらの道具は何をするものでしょう?!
参加された方はもうお分かりですね?!(カブトムシではありません!!)
答えは次回・第6回のブログで紹介します。
Posted by 滋賀の文化財 at
◆2008年03月03日18:58
この記事へのコメント
はじめまして
3,4年前から、表装を習ってます。
大変な作業で、最初の一点は、本当に緊張で
くたびれはてました、
1作品完成に4ヶ月、かかりますが、丁寧に
こころがけてます。できばえは年月かけて、
でてくるようです。その意味もわかりました~
今回はいいべんきょうになり、、ありがとうございました。
また、きます。!
3,4年前から、表装を習ってます。
大変な作業で、最初の一点は、本当に緊張で
くたびれはてました、
1作品完成に4ヶ月、かかりますが、丁寧に
こころがけてます。できばえは年月かけて、
でてくるようです。その意味もわかりました~
今回はいいべんきょうになり、、ありがとうございました。
また、きます。!
Posted by 花かんざし at 2008年03月04日 09:19
花かんざし 様
講座への参加ありがとうございました~!
講師の井上学芸員さんは、「その筋」の方が参加されている事を知ってドキドキされていたみたいですが、内容の濃い講座となりました。
日本の伝統文化を継承してくださる花かんざしさんのような方々に守られて、今ある文化財も後世に残されるのですね。頼りにしています!
是非ともお仕事頑張ってください。
講座への参加ありがとうございました~!
講師の井上学芸員さんは、「その筋」の方が参加されている事を知ってドキドキされていたみたいですが、内容の濃い講座となりました。
日本の伝統文化を継承してくださる花かんざしさんのような方々に守られて、今ある文化財も後世に残されるのですね。頼りにしています!
是非ともお仕事頑張ってください。
Posted by 滋賀の文化財 at 2008年03月07日 18:13