見分けられる?!近世絵画の真贋

見分けられる?!近世絵画の真贋「実物を目の前に学芸員が詳しく解説」する「浮城特別鑑賞講座 湖国“モノ”語り」第4回「近世絵画の楽しみ方-その真と贋」が、1月26日(土)に滋賀県立琵琶湖文化館にて開催されました。





「狗子図」円山応挙 筆
「近世絵画」とは一般的に「江戸時代の絵画」のことを言います。ただ一般に言う「江戸時代」は政治史と文化史ではその区切りに若干のズレが生じますので、ご注意下さい。
政治史・・・慶長5年(1600)関ヶ原の戦い
       慶長8年(1603)徳川家康が征夷大将軍に任ぜられる
美術史・・・慶長年間(1596~1615)は桃山時代
       元和元年(1615)大坂夏の陣を境に江戸時代と定義

また、江戸時代絵画は大きく分けて前・後期に分けられます。
       →・前期:元和・寛永から宝永・正徳(17世紀)
         ・後期:享保から幕末(18世紀から19世紀半ば)
年号は作品の中に記されることが多いですから、チェックしておくと役に立ちますね。(私が覚えているのは寛永と享保くらい・・・)

江戸絵画の特色は想像力(イマジネーション)写実性(リアリズム)の融合!
想像力・・・あり得ないもの、実際に存在しないものを、想像によって描き出す。(古来より日本画の
       特質)例:やまと絵の引目鉤鼻・吹抜屋(源氏物語)・動物の擬人化(鳥獣戯画)・地獄極
       楽(六道絵)など
写実性・・・現実をあるがままに描写。写実的要素の強い花鳥図を得意とする清の画人沈南蘋(し
       んなんぴん)の来朝、正確な銅版画、動植物図譜など、海外からもたらされた要因が大
       きく作用した。

 江戸前期では、公家武家の力を背景にした二大勢力狩野派・土佐派が活躍する一方で、一般庶民の力も画壇に大きな影響を与えます。京都では、強力な経済基盤を背景に台頭してきた裕福な町衆が俵屋宗達を祖とする琳派を形成、またもっとも庶民的な立場からは浮世絵が起こり、いずれの流派にも属さない町絵師たちが風俗画(庶民の日常生活の様相そのもの)を描きました。
 かわって江戸後期は、長期にわたる世の中の不況が画壇においても影響を与えます。久しく画家不作の時代が続きますが、この停滞から抜け出すため、海外の作品に刺激を求めます。鎖国という体制の中で、、中国(南宗画)・オランダ(西洋絵画)の影響を受け新しい写生画法が画界を刺激しました。京都では円山応挙の写生派や伊藤若冲曽我蕭白らの奇想派が活躍します。この時代は、浪漫主義の時代。池大雅や与謝蕪村は中国文化という浪漫の虜となり、応挙にとっての写生、蕭白にとっての曽我派、司馬江漢らにとっての西洋、歌麿にとっての美人、写楽にとっての歌舞伎役者も一つの浪漫でした。できるだけ自由でありたい、因習的な形式や方法にこだわらない自由を求める画風が江戸絵画を彩っていきます。

 また、公家や武家、また大きな商いに成功した町衆の中には、海外との貿易に乗り出す者もあり、有名画家たちの作品を売買する者も現れました。独特の画風を持つ日本画は海外でも人気があり、珍重され高価に取引されることから需要が高まり、有名絵師の作品だけでなくその弟子たちが描いたものや、無名絵師による多くの「贋作」も取引されるようになりました。これらも含め江戸絵画は世界に広まっていったのです。時代に求められた「善意の贋作」、それらが今逆輸入?!され、私達の身近(骨董屋など)に溢れているのです。

見分けられる?!近世絵画の真贋講座では、その参考作品?の一部を見せて頂きました。
見分けられる?!近世絵画の真贋「寿老人図」狩野 探幽 筆

((楽しみ方))
狩野派の絵は粉本主義といって、テキストのようなものが完備されているため、絵画様式が大きく異なることはありません。木の描き方、人物の描き方の特徴をつかむ事により一般の方でも用意に狩野派であると見分けることができます。

見分けられる?!近世絵画の真贋「狗子図」円山 応挙 筆

((楽しみ方))
円山派の絵は、狩野派とは異なり、徹底した写生に基づいているため、子犬がじゃれ合う絵なんか見ていると、自然にその絵に引き込まれ「かわいい」と無意識につぶやいている・・・そんな絵ですね。

見分けられる?!近世絵画の真贋見分けられる?!近世絵画の真贋「山水図」紀 楳亭 筆
((真と贋))
近世絵画の画家のほとんどに「贋物」があると思っていいでしょう。この絵は両方とも紀楳亭の「山水図」です。
どちらかがニセモノですが、よく比べてみるとどことなくその違いが見えてきます。
しかし実際には、こうして両方並べて見ることは難しいことです。ですから、博物館・美術館などで本物を多く見るということが大事です。
           ちなみにこの絵は向かって左が本物、右が贋作なんですよ。

では、ここで<実力テスト>
見分けられる?!近世絵画の真贋さて、こちらの絵画、どちらにも「横井金谷」の落款があります。横井金谷の作品も上述と同じことが言えます。人は贋作を作るとき、どうしても筆に迷いが出るというか、描く線は形をなぞるだけで、のびのびとした力強さがなくなります。心理的な面が出るのではないでしょうか。
そんなところも見てゆけば、楽しいかもしれませんね。

・・・で、この作品、どちらがホンモノでしょう???講座に参加した人はもうお分かりですね?!
答えは次回・第5回のブログで紹介します。

あれれ???そう言えば・・・琵琶湖文化館さん、何故「贋作」をお持ちですか???
講師先生曰く、「文化館の歴史の中でご縁あって持ち込まれたこの作品、贋物であるからと言って処分するでなく、今回のような学習材料として残している。かと言って私達専門家の真贋、見る目も完璧とは言えません。一つの教訓、戒めとして所有しています。」
ナルホド・・・先生方も勉強なさるんですね~

そこで、私達が世に多く出回る「贋作」に手を出さない、見分けるためにはどうすればいいか、助言がありました。
・・・それは・・・「本物を多く見ること!」・・・これしかない!・・・そうです。
あぁ、やはり鑑定師への道は遠かった・・・

見分けられる?!近世絵画の真贋「だからこそ、多く博物館や資料館へ出かけて本物を見る目を養ってほしい。文化館では常に多くの“本物”を展示している。(決して今回の贋物が展示ケースに並ぶことはありません)安心して見て行ってほしい」と仰ってました。
ほんとそうですねぇ~たくさん見て、勉強して、自信を持って、本物を手にしてみたいものです!
            (展示室でホンモノを勉強する参加者たち)
さて、次回の「浮城特別鑑賞講座 湖国“モノ”語り」「文化財のかたち-表装のいろいろ-」と題し2月23日(土)に開催されます。やはり実物を目の前にできるこの講座は魅力大!関連資料を目の前に、学芸員による詳しい解説が聞けますので、是非参加してみてはいかがでしょうか。詳しくは滋賀県立琵琶湖文化館TEL:077-522-8179まで。

見分けられる?!近世絵画の真贋第3回「近江の観音-慈悲の仏-」答え合わせ:「大笑い」されているお茶目な方は:滋賀を!日本を!代表する国宝【木造十一面観音立像】(高月町 向源寺)の後頭部大笑面(暴悪大笑面・笑怒相ともいう)です。一度見たら忘れられないお顔ですね~






Posted by 滋賀の文化財 at ◆2008年02月01日18:54
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